【使い捨てレジ袋】
世界130ヵ国が規制対象に
途上国では都市インフラに支障も FREE

 日本では2020年7月からプラスチック製のレジ袋の有料化が開始され、今年4月のプラスチック資源循環法の施行で使い捨てのプラスチック製品12品目が新たに規制対象となった。現在、世界中でレジ袋への規制(禁止・有料化等)を行っている国は130ヵ国に上り、使い捨てプラスチック規制の入り口として強化する動きが世界中に拡がっている。実はレジ袋を規制・禁止にする施策は、廃棄物の管理体制が不充分な発展途上国での導入が最初だった。先進国における禁止の動機は、CO2削減や環境問題からごみ削減へ向かう流れだが、発展途上国では都市インフラを揺るがすような切実な問題にも繋がっていた。

レジ袋の全面禁止は93ヵ国

 Wikipediaなどによると、2022年4月時点でレジ袋の使用を全面的に禁止にしている国は93ヵ国。ここには一部地域で禁止にしている国は含めていない。93ヵ国のエリア別の内訳は、最多がアフリカで33ヵ国(36%)に上っている。歴史的にアフリカや東南アジア等の発展途上国で、レジ袋禁止法が先進国より先に制定された。の禁止された理由は、①下水や河川が詰まる、②家畜が誤飲して死ぬ、③景観を損なうーが挙がっている。

 アフリカに次いでアジアが25ヵ国(27%)に上っている。人口数で圧倒的なボリュームを誇るインドと中国がレジ袋禁止に乗り出したことで、今後は世界的にもプラごみの削減が加速するとみられる。次いで欧州が18ヵ国(19%)、中南米が16ヵ国(17%)となっている。

 現在レジ袋を禁止にしている国は計93ヵ国だが、禁止にした年代別では、2000年代前半(00~04年)が2ヵ国(2%)、2000年代後半(05~09年)が3ヵ国(3%)。2000年代終わりには計5ヵ国しかレジ袋の全面禁止を実施していなかった。ちなみに法律を制定したものの浸透しなかったブータン(1999年)とインド(2005年)は、再施行した19年と20年をそれぞれ禁止年としている。2010年代前半(10~14年)は9ヵ国(10%)、2010年代後半(15~19年)は52ヵ国と急増した。海洋プラ問題、脱プラ問題、SDGsの提唱が出てきた時期と重なる。2020年代(20~22年)も既に27ヵ国がレジ袋の全面禁止を法律で制定している。

ブータンは使用禁止に失敗

 世界で最初にレジ袋禁止の法律制定に踏み切ったのはブータンで、1999年のことだった。レジ袋による環境汚染に悩まされている国は多かったものの、使用禁止に踏み切る国はそれまでなかった。ブータンは世界で初めてのレジ袋禁止を宣言、そして更にはプラスチック製品全般の禁止も計画していた。だが、結果的には不便を強いられることに反発が出て、試みは失敗に終わった。世界で幸福度がもっとも高いといわれる国でさえ、レジ袋の利便性は手放せなかったわけだ。ブータンの躓きが、各国においてレジ袋禁止の判断を遅らせたのかも知れない。同国でも20年後の2019年に再度レジ袋禁止の法案が可決され、今度は世界に遅れて再挑戦することになった。

不織布製に替えたバングラデシュ

 次にレジ袋の使用禁止を試みたのがバングラデシュだ。同国では2002年にレジ袋の製造・販売・使用を禁止にした。世界で初めて国家レベルで浸透させた国ともいえる。この禁止にした理由は甚大な洪水被害によるところが大きい。1988年と98年に歴史的な大洪水に見舞われたバングラデシュ。モンスーンで降り続いた大雨と河川の氾濫による洪水が都市部を襲い、首都ダッカも全域で冠水して、都市機能が完全に麻痺する状況が1ヵ月も続いた。この洪水被害をより深刻にしたのがレジ袋だった。街中に捨てられていたレジ袋が至るところで下水管を詰まらせ、排水ができなくなって被害を拡大させた。その後2002年にバングラデシュ政府はレジ袋の製造と使用を禁止したのだった。同国でレジ袋を提供しない不便さをどうやって解消したのかというと、不織布製のレジ袋が提供されているという。

多くの国で使用禁止するアフリカ

 発展途上国のアフリカ、アジア各国でも同じような流れが起きてきた。ポイ捨てされたレジ袋によって下水が詰まるという問題が頻発したことで、レジ袋の使用を相次ぎ禁止してきた。2022年4月時点で33ヵ国においてプラスチック製のレジ袋の使用が禁止されている。

 2007年にケニアは、レジ袋の製造事業者及び輸入業者に対して規制を行った。30ミクロンの厚さ以下のものは製造・輸入ができないようにした。また2011年にはこの厚さの規定を60ミクロンに引き上げた。しかしこのような製造・輸入を規制しても、効果を得られなかったため、2017年から全てのレジ袋禁止に舵を切った。

 また2019年からは、同じくアフリカのタンザニアがプラスチック製の袋の使用を一切禁止する方針を発表した。製造・販売から輸入・輸出・保管・供給、そして使用まで禁止するという非常に厳しい法律となっている。国民だけでなく、タンザニアへの旅行者もビニール袋を持ち込むことができない。入国時にスーツケース内にビニール袋が入っていれば入国できず、なんと処分する専門窓口も設けている。ちなみに衛生用品等を入れるジップロックは許可されているようだ。所持していれば87ドルの罰金か禁固1週間、またはその両方が科せられる。製造・輸入した者は43万ドル(約5400万円)の罰金または禁固2年以下が科せられる。

韓国ではレジ袋を高額販売

 韓国では2019年からレジ袋を全面使用禁止にする法律が施行されている。中国の廃プラ輸入禁止によって、行き場をなくした廃プラが同国にも流入することが懸念されていた時期だ。レジ袋規制を有料化から使用禁止とさらに厳しくするすることで、環境意識を高めてプラごみを削減する狙いがあった。ただ、買い物客の全員がエコバッグを持っている訳ではなく、やむを得ない場合は1袋850ウォン(85円)のごみ袋を買わなければならない。かなり高額な単価設定であるが、これは買い物袋として使用した後、家庭用のごみを入れるごみ袋として使用することにもつながる。つまりワンウェイの買い物袋を、家庭用ごみ袋として併用して有効利用できることを促している。

インドはレジ袋禁止を再施行

 インドは2020年1月から全ての使い捨てプラスチック製品の使用を禁止した。同国は2005年にレジ袋禁止の法律を施行したが、ほとんど効果がなかったという苦い過去がある。今回の対象はプラ製の容器・袋・トレイ・包装フィルムで、これらの製造・販売・使用・輸入を禁止にしている。インド政府はこの政策によって、プラスチックの消費量1400万トンの5~10%(70~140万トン)を削減する目標を掲げた。背景にはヒンズー教で神の使いとされる牛が、レジ袋を誤飲して死んでしまうということが相次いだため、レジ袋を法律によって禁止することになったという。

2025年までに全面禁止する中国

 世界で廃プラ排出量のもっとも多い中国は、2023年から全ての都市で使い捨てプラ製品の使用を禁止にする。その中にはレジ袋やストロー等も含まれている。この政策には一部例外も含まれており、生鮮食品を販売する市場は2025年末までの猶予期間が設けられている。既に厚さ25ミクロン未満のレジ袋は、製造・販売・輸入が禁止されている。また外食産業は、使い捨てプラスチック製品の使用量の30%削減を義務付けられている。ホテルでは2025年までにプラスチック製のアメニティの無料提供が禁止される。

欧米では有料化によるインセンティブ

 EUでは2025年までに、1人当たりのレジ袋使用量を40枚以下にする目標を掲げている。これは2015年対比で70%以上の削減となる。この目標達成に向けて各国はレジ袋の使用禁止か有料化を実施している。欧州の中ではイタリアが先行して2011年にレジ袋の使用を禁止する法律を制定した。国内のごみ問題が深刻化していたことや、観光地の景観がレジ袋によって損なわれれることが懸念されたためだ。

 現在、欧州で計18ヵ国でレジ袋の使用を規制している。だが、どちらかというと欧州各国は、全面禁止というより、有料化による対策を率先して行ってきた。英国は2015年から1枚7円の有料化を開始し、2020年からは倍額の1枚14円に値上げした。その結果、有料化する前に比べてレジ袋の消費量を既に80%減少させており、将来的には95%減の目標を掲げている。

 ドイツでは今年1月からレジ袋の配布と販売を禁止。最高で 10万 ユーロ(約1370万円)の罰金が科されることもあるという。禁止されるのは、厚さ15~50マイクロメートルのレジ袋で、果物や野菜、肉などを包む薄手の袋(厚さ15マイクロ未満)は対象外となった。ただ、ドイツの2019年における1人当たりの年間レジ袋使用量は約21枚と、すでにEU目標を達成。小売業界からは過剰な規制との声もあがっている。

 米国でもニューヨーク州では2020年3月から全面禁止となり、ハワイ州でも21年から規制を始めたが、全面禁止には至っていない。中国と並んで廃プラ排出量が多い米国であるが、規制は一部地域のみの実施に留まっている。

 既にインドや東南アジア、アフリカ各国はレジ袋の全面禁止の法律を制定し、中国やドイツといった大国が続く。途上国では都市インフラへの影響から規制が強化されたが、先進国では使い捨てプラスチック使用を削減する方針からと、その動機は異なっている。いずれにしてもレジ袋が皮切りとなって、ごみ対策や再資源化の方法を示せない使い捨てプラスチックは世界的で規制が強まっていくとみたい。

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