
新年の風物詩となったマグロの初競りで、すしざんまいを運営する喜代村が青森・大間産のクロマグロを史上最高となる5億1千万円で落札した。キロ単価にすれば210万円、すし一貫に換算すれば2~3万円という破格の値段だ。それでも店頭で提供されたマグロは通常価格と同じというから驚きだ。もっとも、この落札価格は正真正銘の「ご祝儀相場」であり、原材料費として消費者に転嫁されるものではない。広告宣伝費として回収される、打ち上げ花火のような価格であろう。しかし同時に、私たちの価格感覚を大きく揺さぶった出来事でもあった。
▼意外にも世間から「けしからん」という声がさほど上がらなかった点は興味深い。デフレ下の景気づけというより、今回は物価高が常態化した社会において、最高値の更新そのものが“異常ではない光景”として受け止められた面もありそうだ。株式市場や不動産価格が過熱すれば、すぐに警戒論や冷や水が浴びせられる。一方で、なぜかマグロには財布のひもも、世論の目も緩む。国民的食材という安心感なのか、新年の縁起物という免罪符なのか。見方によっては、インフレの進行が一瞬で可視化され、知らず知らずのうちに値上げへの耐性が引き下げられた出来事だったとも言えそうだ。
▼さて、この祝儀相場の発想を、価値転嫁が課題となっている再生プラスチックに応用できないだろうか。再生材は「安かろう悪かろう」という固定観念が根強い一方で、実際には分別・洗浄・加工といった工程にコストがかかり、バージン材より高価になるケースも少なくない。それでも価格転嫁は慎重に、少しずつ行われるのが実情だ。人々の行動変容を促すには、時にショック療法的なアプローチも必要だろう。環境価値とコストを正面から可視化し、「これだけの手間と費用がかかっている」と、どどーんと示す。再生プラ市場にも、ときに起爆剤となるような“祝儀相場”を打ち上げる、威勢のいい企業の登場が待たれる。
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