【シタラ興産】
埼玉で一廃・産廃焼却施設に122億円投資
2027年に稼働予定、年間1万5000MWの発電も

焼却発電施設であるレガリアの完成イメージ

 埼玉の中間処理事業者である(株)シタラ興産(埼玉県深谷市、設樂竜也代表取締役)は総額122億円を投じ、埼玉県下で最大級の民間焼却施設を建設する。荏原環境プラント製の循環流動床の焼却炉を導入し、廃プラスチックなどの処理困難な産廃や一廃を受入れ、同時に年間1万5000MWの焼却発電も行って売電と自家消費で活用する。既に融資のローン契約や許認可取得も完了しており、2027年の稼働を目指して今年5月にも着工する。

 まず同社のこれまでの軌跡を振り返ってみたい。同社は1977年の創業。廃品回収業からスタートし、その後、解体時に出る廃棄物に着目して廃棄物処理業へシフト。現在の設楽竜也代表取締役は二代目の社長で2016年に就任した。社員数は約100名を数え、ニーズを先読みして設備投資する経営スタイルに特長がある。今回、同社の拠点であるサンライズFUKAYAと本社工場を案内してもらったので、それぞれの概要に触れたい。

 ちなみに、案内してもらったといっても、現場を直接回ったわけではない。社員の方が装着するウェアラブルカメラを通じて、会議室から内部を見学させてもらった。産廃処理施設の構内は通常、粉塵が舞い、見学者がスーツなどで機械に近づけば巻き込み事故などのリスクを伴う。コロナ禍に見舞われ、非接触のコミュニケーションが求められたこともあって、同社ではウェアラブルカメラの端末を導入。訪問者がモニター画面を通じて、構内を見学できる方式を導入したわけだ。

 この端末はアメリカ製でソフトウェア利用料を含めてかなり高額であるが、見学者の応対だけでなく、熟練者が遠方から初心者の作業を支援することも可能となり、常に見られている感覚から物損事故の発生頻度の減少にも繋がったという。同社が設備(現在7台所有)へ先行投資して、複合的な効果を生み出す一端が見て取れる。

 サンライズFUKAYAは、2016年に竣工した、建廃系の混合廃棄物を受け入れる中間処理施設だ。約5000平米の広さがあり、受入れ廃棄物は1日あたり約500トン。主に同業他社が埋立て処分をしていた混合系廃棄物を受入れ、分別処理する施設である。そのため、大型の破砕機と選別機を導入して機械化を図り、どのような廃棄物でも受け入れて処理することがコンセプトになっている。日本で初めてAI選別機を導入して、注目を集めた中間処理施設でもある。設備の総投資額は当時で30億円に上っていた。

 処理の流れは①2軸破砕機で50cm 以下に破砕、②定量供給機で30立米まで貯留、③バリオセパレータで軽量物と重量物を選別、④重量物をAI選別機で選別、⑤ハンマー破砕機で衝撃切断・粉砕、⑥比重差選別で引力と振動により、可燃物、再生砕石、再生砂の3種類に選別、⑧ジャンピングスクリーンで可燃物からダスト分を取り除き、これらは焼却対象物となっている。

国内で初めて導入したAI選別機で注目浴びる

 サンライズFUKAYAで導入したのが、ゼン・ロボティクスと呼ばれるAI選別機(フィンランド製)だ。基本的な機能は、センサーで画像認識し、コンベア上をアームが動いて対象物を掴んで分けるというもの。

 まずセンサーは、RGBカメラ、近赤回線カメラ、3Dレーザースキャナー、金属探知機の4つで識別する。また1ユニットに2基のアームが備えられ、同社では2つのユニットを直列に設置。つまり計4基のアームがある。アーム1基で時間あたり2000回の選別作業が可能である。最大20キロまで掴むことができ、廃プラであればPPやPEといった樹種別の選別も可能である。

AI選別機のゼンロボティクス

 この選別機は、AIがビッグデータを用いて学習しながら、選別精度を高めていくところに特長がある。色や形状、汚れ具合など、2つとして同じものがない廃棄物を見分けられる、高度な選別機となっている。ただ、選別精度は完全なものではないため、AI選別機の後ろのラインで作業員2名が待機し、金属の塊や異物などを取り除いている。

 これまで世界で販売されたゼン・ロボティクスの台数は計30台。このうち日本で同社を合わせて3台が動いている。頭脳でもあるサーバーは海外にあり、世界中の廃棄物データを蓄積。半年に一度ほどソフトウェアのアップデートがあるそうだ。当然、選別精度も導入当初に比べて格段に上がっているそうだ。ちなみに、ゼン・ロボティクスは2022年10月に米国のTerex Materials Processingに買収され、子会社となっている。

 設備投資の際、経産省のロボット導入実証事業の補助も受けたとはいえ、選別機の単体としては桁違いに高い設備投資額だ。だが、同社の場合、導入からすでに8年を経て十分に投資回収できたという。

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