公正取引委員会が2月8日の定例会見において、廃PETボトルの実態調査を始めることを明らかにした。大手飲料メーカー主導によるボトルtoボトル(BtoB)リサイクルが拡がり、廃PETボトル原料は奪い合いとなってきた。飲料メーカーが直接自治体と契約を結ぶケースが増え、産廃業者から自販機由来の廃PETボトルの囲い込みにも動いた。公取委の調査ではこうした市場メカニズムによって企業の環境対策が適切に行われているのか、独占禁止法の観点から検証する。他のリサイクル手法にも公平な機会が与えられてきたのか、飲料メーカーの優先的地位の乱用にあたらないのかが、焦点となりそうだ。
本媒体は会見に出席したわけではないので、公取委に問い合わせてみたところ、「現時点でオープンにできることは限りがある」と前置きした上で、「客観的に調査していくものであって、違法行為の証拠集めや摘発をするためではない」という。調査については、容リルート・独自ルートで奪い合いとなっている家庭系PETボトルだけでなく、法律上、再生の義務付けのない事業系PETボトルも対象にしていくようだ。容リ法といった法制度の改正については「排除しないが、(現時点で)念頭にありません」とのことだった。今後、広く関係者に書面調査など行っていくため、なるべく多くの協力を得て、実態を把握してきたいとのことだ。報告書は2023年夏ごろまでに、公取委のWebサイトを通じて公表される。
PETボトルの再生リサイクル業者など関係者にも聞き取りを行ったところ、独占禁止法に定める規定において問題となりそうなのが、①自治体と飲料メーカーの独自ルートの契約、②飲料メーカーと産廃業者との廃棄物処理の契約ではないだろうか。同法では「不公正な取引方法」の具体的事項として、「排他条件付取引」、「優先的地位の乱用」を規制している。前者は競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること、後者は取引上の地位を利用し相手に不利益を与えることをそれぞれ取り締まるものだ。
自治体が独自ルートで飲料メーカーと協定を結ぶ場合、PETボトルを引き渡す条件としてBtoBリサイクルを優先している。また自動販売機の事業系PETボトルを扱う産廃事業者に対しても、これまで自由に売却先を選べたが、飲料メーカーがクローズドシステムの仕組みを築き、産廃業者とBtoBを優先させる契約改定を求めてきた。
しかし、PETボトルのリサイクルにおいても事業者に広く公平な機会が提供されるべきだろう。つまり飲料メーカーによる廃PETボトルをBtoBへ導く手法が、他の事業者の参入を阻害したり、廃棄物業者に不利益を与えてきた可能性がある。プラジャーナルでは公取委の調査において、独自ルートの契約に至ったプロセスや契約書、また産廃業者とのクローズドシステムでの契約が仔細にチェックされるのではないかとみている。
…
この記事は有料会員記事です
▼残りの66%を読むには、会員登録が必要です▼
この記事は有料サービスをご契約の方がご覧になれます。
契約されている方は、下記からログインを、
契約されていない方は無料トライアルをご利用ください。
2024年11月25日【プラスチック汚染対策条約】INC-5が韓国・釜山で開幕へ、年内合意なるか生産規制などの争点残し、条文案を議論
2024年09月09日【2024年度下期 PETボトル入札結果】上期より35円上昇し、落札単価-84.5円/kgに協栄産業グループが巻き返し、東西格差薄まる
2023年01月23日【東京23区】全区でプラスチック脱焼却へ、プラ新法後押し 一括回収のモデル実施、残す3区でも検討進む
2024年01月26日【シタラ興産】埼玉で一廃・産廃焼却施設に122億円投資2027年に稼働予定、年間1万5000MWの発電も
2024年11月25日【PETボトルリサイクル推進協議会】リサイクル率85%、水平リサイクル率は34%「PETボトルリサイクル年次報告2024」刊行
2024年11月25日 コラム
都内日中の気温が20度を超える暖かさだった10月の日曜日、東京・練馬区で市民祭「練馬まつり」が開かれた。ステー[...]
2024年11月18日 コラム
東大阪市は大阪市の東に隣接した人口48万人の中核都市で、昔から「ものづくり」の街として有名である。市内には約5[...]
2024年10月28日 コラム
10月中旬にマレーシアを訪問した。古着のリユース事業において、マレーシアは今や世界で最も関係者から熱い視線を注[...]
2024年10月15日 コラム
恥ずかしながら10月20日が「リサイクルの日」ということを知らなかった。「ひとまわり(10)、ふたまわり(20[...]