オフィス用品通販大手のアスクルが2022年12月、新PBブランド「Matakul」(マタクル)を立ち上げて、使用済みプラを原料使用した4商品の販売を開始した。国内で販売シェアの高いクリアホルダーに絞って回収し、原料として再生する循環スキームを築いた。同プロジェクトは、①実証実験から事業化を実現したこと、②使用済みプラを身近な製品に変えたこと、③「便利さ・安さ」という顧客価値に「環境」を加えたことに大きな意義がある。製品価格の高さが普及の壁だが、資源循環におけるトレーサビリティと排出元企業による協力体制が強みであり、今後の商品拡充や顧客支持をどこまで獲得できるのか注目される。
プラスチック製品の中でも、オフィスの文具・事務用品は、回収・リサイクルが進んでおらず、廃棄処分されることが大半だった。環境省の調査による事業系一般廃棄物の処理量の推移をみると、2011年以降、1300万トン前後でほぼ横ばいとなっている。オフィス文具・事務用品だけでみた回収量は不明だが、二十三区一部清掃事務組合の調査では、事業系ごみのうち、プラスチック類は可燃ごみで14%、不燃ごみで28%を占めている(2008年度調査)。
アスクルはオフィス用品・文具の通販大手で、22年5月期の業績として売上4285億円、営業利益143億円を計上している。コロナ禍でオフィスでの働き方が変わった中でも、個人向けや医療機関向けの販売チャネルを強みに業績を伸ばしてきた。一方で環境経営も推し進めており、2013年5月には環境中長期目標を設定している。その一つとして「環境に配慮した商品開発・調達を行う」ことを掲げてきた。
Come bag(カムバッグ)という2021年12月に販売を開始したオリジナル紙袋は、アスクルのカタログを原料に開発。サプライチェーン各社による協力のもと、使用しなくなったアスクルカタログから古紙パルプを造り、それを15%配合した原紙から紙袋を製造して、商品化したものだ。
今回のアスクルの新PBシリーズ「Matakul(マタクル)」は、同社が独自に構築した使用済みクリアホルダーの資源循環スキームの中で開発した製品ブランド。2020年11月から2022年3月までの環境省の実証事業を経て、2022年12月に製品化と販売開始にこぎつけた。実証実験では、国内各地のオフィスから使用済みクリアホルダーの回収を試み、分別再資源化したペレットの品質を検証した。当初、2022年3月までの実証事業では40トンの回収目標だったが、これを上回り、2022年12月末時点で89トンという十分な量を確保できた。また再生ペレットの品質も原料として使用するのに支障ないレベルであることが分かった。
この再生ペレットを原料に製品開発したものが、今回のPBブランドである。その第一弾として上市したのは、クリアホルダー、ボールペン、ペン立て、小物入れの4品種である。使用済みプラを配合した製品とはいえ、機能的にはバージン原料の製品に比べてまったく遜色はない。これまで使用済みプラは、必要なロットの原料が集まらず、品質も安定しないため、汎用品への原料配合が進まなかった。工場端材の再生プラによる製品はあっても、異物が混ざりやすい一般の使用済みプラは難易度が高かった。アスクルは自社が販売したクリアホルダーに限らず使用済みプラ製品を回収して原料利用し、製品化したところに大きな前進がある。
…
この記事は有料会員記事です
▼残りの75%を読むには、会員登録が必要です▼
この記事は有料サービスをご契約の方がご覧になれます。
契約されている方は、下記からログインを、
契約されていない方は無料トライアルをご利用ください。
2024年04月15日【直富商事・第3工場】長野市内で初のRPF製造工場(年間3千トン)を稼働AI搭載のアーム・選別機導入、省人化の次世代型工場に
2023年01月23日【東京23区】全区でプラスチック脱焼却へ、プラ新法後押し 一括回収のモデル実施、残す3区でも検討進む
2024年04月15日【マツダ】廃プラと古紙で相乗効果、今年5月に1ライン増設事業系ごみ袋でクローズド実現、革新的事業も模索中
2024年04月15日【ExtraBold】3Dプリンタを軸とした新たなプラ資源循環コンパクトでシステム化した新型機を普及へ
2022年08月30日【容リPET 2022年度下期速報】PETボトルの落札平均価格が115円/kgにバージン市況軟化の中、過去最高値を更新 FREE
2024年04月15日 コラム
ファーストペンギンという言葉がある。常に集団で行動するペンギンの中で、天敵がいるかもしれない海に向かって、真っ[...]
2024年04月08日 コラム
紅麹を含むサプリメントが健康被害を引き起こし、騒動となっている。この「機能性表示食品」というのは、2015年に[...]
2024年03月25日 コラム
先日、直富商事(本社・長野市)が新設した第三工場を取材した。混合廃棄物の中間処理施設で、この分野では日本で初め[...]
2024年03月18日 コラム
サーキュラーペット津山工場の竣工式(3月14日)に、サンドリン・ムシェ在京都フランス総領事が来賓として招かれ挨[...]