
フランスの思想家ジャン・ボードリヤールが1970年代以降に提唱した「シミュラークル」という概念がある。現代社会では、記号やイメージ、モデルが現実を単に表象するだけでなく、やがて現実との対応関係を失い、それ自体が「現実」であるかのように機能する――という理論だ。これは、リサイクルや資源循環にも当てはまるのではないか。実際の再生原料の循環よりも、「リサイクル」「資源循環」という記号のほうが社会のなかに氾濫し、消費される。そんな逆転現象が起きているのである。
▼本来、リサイクルとは、廃棄→回収→処理→加工→再生→製品→使用→再び廃棄という、物質そのものの循環である。ところが、「分別収集に協力しています」「循環型社会に貢献しています」といった表示や喧伝だけが連鎖し、それ自体が資源循環の実態であるかのように受け止められる。現に、プラの資源循環率(マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの合計)は22%程度にとどまり、2019年に政府が公表した「プラスチック資源循環宣言」以降も、その比率はほぼ上がっていない。それでも私たちは「循環が進んでいる」という実感だけを強めてきたような錯覚がある。
▼その記号と現実のずれを突きつける出来事が起きた。容リ協(32条)ルートで再商品化される予定だった容リプラ・製品プラ1万t弱について、再商品化事業者が期中で受け入れを辞退し、振替先の確保が急務となっている。初となる緊急的・補完的措置としてRPF化に踏み切るのか。それとも自治体に差し戻し、焼却施設での処理を求めることになるのか。制度に乗せれば再商品化される――。そうした予定調和が今回の事態によって揺らぎ、記号の背後に隠れていた「出口」の現実が、否応なく露呈しようとしている。
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