PETボトルリサイクル推進協議会によると、2019年のPETボトル回収量は55万2千トン(市町村分別収集量と事業系回収量の合計)で回収率は93.1%。世界的に見てもPETボトルの回収率が90%を超える国は他にないだろう。ちなみに資源化量は50万9千トンなので、リサイクル率は85.8%となっている。
資源化量50万9千トンのうち、国内向けが32万7千トン(64.2%)、海外向けが18万2千トン(35.8%)。2010年までは海外向けの輸出量の方が多かったが、2011年から国内向けの量が上回っている。国内向けの内訳は、容リルートが21万7千トン(42.6%)、独自処理ルートが8万8千トン(17.3%)、事業系ルートが20万4千トン(40.1%)。
PETボトル回収実績(2019年)によると、市区別で最も多かったのは横浜市で1万3千トン。回収量が年間で1万トンを超えているのは横浜市のみ。2位が名古屋市の9,280トン、3位が札幌市で7,682トン、4位が大阪市で7,588トン、5位が仙台市で5,441トンとなっている。また1人当り回収量で最も多かったのは仙台市で、4.96キロと2位に大差を付けた。2位は東京都江東区で4.33キロ、3位は長崎市で4.20キロ。1位の仙台市や2位の江東区の落札単価は-50~60円台と高いが、長崎市は-0.02円と安い。4位は名古屋市で3.98キロ、5位は東京都板橋区で3.95キロとなっている。(容リ入札は逆有償が前提なので、有償取引はマイナスで示される)
容リの落札単価は、各市区によってかなり開きがある。まず21年度上期から。PETボトルの行政回収量が多いトップ30市区の中で、最も引渡単価が高かった(有償の販売単価)のは、千葉市・船橋市・江東区のキロ-41円だった。次いでさいたま市が-39.6円、宇都宮市と世田谷区が-39円、八王子市が-38円、川口市・江戸川区・練馬区が-37円、板橋区が-35.2円、杉並区が-35円。高値は全て関東圏ということが特徴。関東圏は発生量が圧倒的に多く、また各PETリサイクル工場も林立していることから、発生消費ともに群を抜いており、必然的に取引価格も高くなる傾向がある。
しかし関東圏の中で横浜市は21年上期では例外だった。上期の落札単価は57.5円という逆有償で、処理費用を払って引き取って貰っていた。また神戸市は更に高く、98.0円の逆有償価格だった。神戸市のPETボトルは品質が悪く、以前から取引価格も低い。また京都市が18円、札幌市が15円、鹿児島市が9円、長崎市が8円の6市が逆有償だった。
21年度下期は一転してPETボトルの引渡価格が高騰した。平均単価の推移では、20年上期-43.4円→20年下期-1.8円→21年上期-7.9円→21年上期-42.9円となり、この2年間は特に価格変動が激しかったことが分かる。
21年度下期の市区別単価では、最も高かったのは東京都世田谷区でキロ-68.2円。次いで宇都宮市が-65.7円、川口市が-65.3円、八王子市と江東区が-65.2円、千葉市が-64.1円、板橋区が-63.4円、船橋市と練馬区が-63.3円、杉並区が-63.2円、江戸川区が-61.3円、新潟市が-60.5円。上期と同様、関東圏の落札単価が圧倒的に高く、キロ-50~60円台が多くなっている。
上期と比べて最も単価が上がったのは神戸市で、上期の98.0円から下期は-9.0円となり、-106円という記録的な上昇となった。また横浜市も上期の57.5円から下期は-34.8円となり、-92.3円の上昇となっている。また神戸市や横浜市ほどではないが、各市区とも軒並み上昇している。仙台市は-46.3円の上昇、新潟市は-45.2円の上昇、名古屋市が-39.5円の上昇、川崎市が-35.9円の上昇となった。他市区でも-20円前後の上昇となっている。
ほとんどの自治体が上昇したが、福岡市のみ下落している。上期が-9.0円で下期は-6.2円となり、2.8円下落した。
各地域の古紙問屋・産廃業者にヒアリングを行い、現在のPETボトルの市中価格を調査した。対象業者は12社で、合計の扱い量は年間1万2千トン(推定)。シェアは2.2%となる。今後は更に調査対象業者を拡げていきたい。
古紙問屋・産廃業者が扱うPETボトルの販売価格は、今年下半期から急上昇した。やはり容リの落札結果の発表によるインパクトが大きく、それまではせいぜい20円前後(ベール品)だったものが、現在は安くてもキロ30円台、高いところではキロ60円まである。
地域別の販売単価を見ると、家庭系のPETボトル(工場着値)では、北海道=25~30円、東北=30~35円、関東=50~60円、中部=40~50円、近畿=40~50円、中四国=40~45円、九州=40~50円。一方、事業系のPETボトル(工場着値)は、関東=40円、中部=30円前後、近畿=25~30円、九州=35円前後となっている。
発生地やメーカーの工場立地によってかなり価格差が出ているのが現状。例えば北海道は再生PET樹脂の製造メーカーが少ないため競争原理が働かず、市中価格も25~30円と最も安い。21年下期の落札価格でも、札幌市はキロ5.0円とかなり安い価格だった。また中四国も再生PETメーカーが少なく、近畿か九州に持っていかなければならないので、横持ち運賃がかかり、他の地域よりも取引価格は安い。
一方、最も発生量が多い関東は、関東近郊に再生PETメーカーが多く、横持ち運賃も安く済むことから、関東の市中価格・入札価格ともに50~60円が一般的となっている。もちろん事業者の扱い量やグレードによって価格差はある。今回の調査では、市中価格はその地域の容リ落札結果にある程度リンクしていると言えるだろう。
PETボトルの品質ランクとしては、家庭系のAランク(ラベル・キャップなし)、とCランク(ラベル・キャップあり)、事業系の3ランクに分けられる。現在の価格帯だとAランクとCランクで5~10円差、Cランクと事業系で10~15円差がある地域が多い。つまりAランクが45円だとすると、Cランクは35~40円、事業系が20~35円となる。事業系PETは特に価格帯の幅が大きい。
PETボトルは容リの落札結果でも分かるように、価格変動が他の再生資源物に比べて大きい。またこれまでは外的要因(中国需要や規制等)によって影響を受けることが大きかった。また回収コストが他の資源物よりも高いということも見逃せない。よくPETボトルの回収は、「空気を運ぶ」と例えられるように、PETボトルの輸送効率は極端に悪い。ある古紙問屋によると、回収コストは古紙ではキロ8~10円ほどが一般的だが、PETボトルだとキロ25円かかるという。現在のように40円~50円で売れる時は良いが、これが10円でしか売れない時は逆ザヤで赤字になる。
PETボトルを多く扱う業者に産廃業者が多いのは、逆ザヤになっても処理費用を貰えるという仕組みがあるから。古紙問屋で産廃許可を取得していないと、逆有償になると、専ら物ではないPETボトルを扱うことができなくなってしまう。このように、①回収コストがかかりすぎること、②価格変動が激しいこと、③逆有償では扱えないこと等がネックとなり、古紙問屋で本格的にPETボトルリサイクル事業に参入するケースは限られてきたと言えるだろう。
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