環境省 海洋プラスチック担当交渉官 小林豪氏
プラスチック汚染対策条約の策定に向けた政府間交渉の第2回会合(INC2)に出席した日本政府代表団の一人である環境省の海洋プラスチック担当交渉官、小林豪氏に交渉の進捗状況や今回の成果、今後の方向性などについて尋ねた。INC2は5/29~6/2までフランスのパリで開催され、170ヵ国・地域が参加。規制のあり方などを議論し、日本はHAC(高野心連合)に加盟するとともに、アジア太平洋地域の理事に就くなどし、積極的に交渉に参画する姿勢を示した。参加国の間で2024年末までに条約内容の合意を目指している。
-今回のINC2パリ会合では何を議論し、一番重要な成果は何だったのでしょうか?
「今回は、プラスチック汚染対策条約を策定するための政府間交渉委員会の第2回目として、条約の主な要素となる目的規定、各国が負う義務、義務を履行するための支援措置等が議論されました。一番重要な成果は、今回の議論を踏まえて11月に開催される次回INC3までにゼロドラフト、すなわち具体的な条文案を作成することを決定したことです」
-条約が各国に課す義務については、プラスチックの生産を制限する一律規制を目指す側と、国別行動計画を柱として各国ごとで取組を決めるべきとする側があると理解していますが、ゼロドラフトはどちらの内容になるのでしょうか。また、それはいつ公開されるのでしょうか。
「INC3の文書はその6週間前に公表されるため、ゼロドラフトは9月末頃に出てくると思います。ゼロドラフト自体は、INC2における各国の主張を余すところなく捉えたものです。厳しい規制を求める内容から各国それぞれの自由に任せるべきだというものまで、幅広いオプションを網羅した文書になるので、議論の方向性を見極めるのは難しいでしょうが、議論の幅は自ずと見えてくると思います」
「国内の報道をみていると、一律規制や生産制限といった言葉が一人歩きしている印象があります。単純明快な二者択一という状況ではありません。一律規制派とされる側も、国別行動計画派とされる側も、現場レベルで必要な取組について実際はそこまで大差はないかも知れません」
「また、EUが提案しているのはプラスチック全体の生産量を一律に減らそうという乱暴な議論ではありません。生産とリサイクルなどの処理のキャパが均衡していなければプラスチックは経済にとどまらず環境へ流出してしまいます。化石燃料由来の一次ポリマーを減らし、生産に占める再生プラスチックの割合を増やそうという考え方と理解しています。一次ポリマーの生産制限を手法として支持しない側も、プラスチックの資源循環の向上をどのように実現できるのかを説得力を持って示すことが求められています」
…
この記事は有料会員記事です
▼残りの81%を読むには、会員登録が必要です▼
この記事は有料サービスをご契約の方がご覧になれます。
契約されている方は、下記からログインを、
契約されていない方は1か月の無料トライアルからお試しいただけます。
2025年02月25日【ELV規則案を改定】 再生材の利用率基準を緩和、開始時期は前倒し欧州のリサイクル業界団体らは修正案に反発
2025年04月21日【横浜市】4月から全区域で容リ・製品プラの一括回収開始兼子・横浜戸塚営業所、中間処理ラインを増設し対応
2025年04月16日【2025年4月のPETボトル市況】飲料大手の調達抑制で、事業系PETがツレ安シート向けは70円台維持も、下値探る展開に
2025年01月14日【プラニック】 ヴェオリアが昨年12月に撤退し、豊田通商が株式承継本格稼働からわずか2年、採算や品質改善でもハードル
2023年01月23日【東京23区】全区でプラスチック脱焼却へ、プラ新法後押し 一括回収のモデル実施、残す3区でも検討進む
2025年04月21日 コラム
先日、長崎県の離島・対馬を初めて訪れた。複雑なリアス式海岸と対馬海流が交わる地理的条件のため、大陸から流れ出た[...]
2025年04月14日 コラム
環境副大臣の中田宏氏に直接インタビューする機会を得た。氏は、若くして横浜市長として活躍したことで知られるが、廃[...]
2025年03月24日 コラム
我が家の鉢植えの桜もつぼみが膨らみ、春の訪れを感じるこの季節。来月からは新入社員が社会人としての一歩を踏み出す[...]
2025年03月17日 コラム
対馬は九州の玄界灘の韓国寄りに位置する島で、本州に付随する島では佐渡島・奄美大島に次いで3番目に大きく、人口2[...]