公正取引委員会(以下、公取委)は10月16日、PETボトルのリサイクルに関する実態調査の報告書を公表した。自治体が分別収集したPETボトルは、容リルートを通じて再商品化事業者にわたり、リサイクルされることが一般的だったが、近年では大手飲料メーカーが直接、自治体と提携を結び、「水平リサイクル」を実現するケースが増えていた。容リルートは容リ法に基づく制度ではあるものの、こうした自由な競争を妨げてはならないとして、公取委は日本容器包装リサイクル協会(容リ協)には提言を行い、全国清涼飲料連合会(全清飲)に対しては改善を求める行政指導を行った。公取委と容リ協の両者に取材した。
公取委が公表した調査報告書は、ポイントとして2ページ、概要版として16ページの他、本体は143ページに及ぶもの。市町村、PETボトルを利用する製造事業者や再商品化事業者、関係者106名に書面調査やヒアリング調査を実施した。公取委は取引調査室の計7名のチームで、2023年2月から9月までの約8ヵ月間にわたって調査を実施したという。
ちなみに公取委は、行政組織上は内閣府の外局と位置付けられるが、省庁とは異なる行政委員会の一つである。委員長と4名の委員で意思決定しており、任期中は総理大臣でも解任できない独立性が担保されている。組織の目的は、独占禁止法を運用するとともに、最近では補完法である下請法の運用も行っている。今回、関係者の回答率の高さからみるように、強い権限をもつ組織体である。
また特定の省庁や政策を後押しするのではなく、基本的にはニュートラルな立ち位置であるが、規制を撤廃することが主眼にある。またSDGsといった社会的な関心の高まりについては考慮しているという。調査に関しては結論ありきでなく、また法改正の必要性まで踏み込み、提言することもほぼないという。今回、PETボトルのようなリサイクル業界で実態調査を行うことも前例がなかった。
独占禁止法からみて、PETボトルのリサイクルで何が問題だったのか。公取委が指摘した事象は2つだ。①自治体によるPETボトルの引き渡しについて、容リ協が誤認を招く働きかけがあったこと、②飲料メーカーの業界団体である全清飲が自治体へ独自処理の営業を制限する合意を取り交わしたことである。
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