農業が盛んな茨城県では、使用済み農業用プラスチックの発生も多く、県や公社がリサイクルに積極的に取り組んできた。だが、先進的に取り組んできた故に、公設のリサイクルセンターにおける設備の老朽化や回収量の減少にも直面している。もともとは農業者の負担を軽減するため、共同で農業用プラスチックを処理する施設だが、マテリアルやケミカルリサイクルでも旺盛な引き合いがある。2027年度頃までに随時、機械の修繕や入れ替えを行う計画であるほか、広域から回収する実証実験を手掛けたり、外部企業から休止中の一部設備の再稼働に向けた提案も受けており、今後、同センターの位置づけから目が離せなくなりそうだ。
茨城県は農業産出額で全国第3位の農業県。農業者から出た使用済み農業用プラスチックは、(公社)茨城県農林振興公社が運営する園芸リサイクルセンター(茨城県東茨城郡茨城町)で処理している。センターの土地、建物、機械設備は県の所有で、それを公社に貸与している。
農業用プラスチックは大きく「農ビ」(農業用塩化ビニールフィルム)と「農ポリ」(農業用ポリエチレンフィルム等)に分けられる。農ポリは各県で含める範囲が少し違うが、同県では農ポリ(農業用ポリエチレン)や農PO(エチレンとエチレン酢ビ共重合体EVAを多層成形したフィルム)、農サクビ(農業用酢ビフィルム)等のことで、RPFに使えるものを指す。
回収・処理の方法は、農ビと農ポリとで異なる。農ビは各農業者が市町村の指定する集積場所に持ち込み、そこからセンターに運ぶ。それを洗浄、破砕し、フラフにした後、砂状のグラッシュといわれる再生品に加工して、床材中間層の材料として床材メーカーに販売している。農ビの年間処理量は約2000トン。
農ポリは農業者と民間の産廃処理業者が直接契約している。契約書とりまとめ等手続きや処理料金の支払いなどはセンターが代行するが、廃プラ自体は市町村から直接業者に運ぶ。公社は廃棄物の収集運搬業と中間処理業の業許可を取得しており、運搬作業はセンターが行う。現在の年間回収量は約2400トン。100%サーマルリサイクルで、そのうちのほとんどはRPFとなり、一部は発電燃料になっている。
同センターには農ビのグラッシュ生産工程と農ポリの圧縮減容生産工程の設備がある。
グラッシュ生産工程は、農ビを約20センチ四方にする粗砕機、1回目の洗浄を行う第1トロンメル(回転式選別機)、約3センチに粉砕する粉砕機、第2トロンメル、比重分離を行う撹拌機、仕上げ洗浄の第3トロンメル、脱水機、乾燥機、摩擦熱で半溶融状にするミキサー、ふるい機、リボンブレンダーなどで構成されている。トロンメルが3台あるように、洗浄分離の工程が重要な鍵となっている。
…
この記事は有料会員記事です
▼残りの66%を読むには、会員登録が必要です▼
この記事は有料サービスをご契約の方がご覧になれます。
契約されている方は、下記からログインを、
契約されていない方は1か月の無料トライアルからお試しいただけます。
2025年01月14日【プラニック】 ヴェオリアが昨年12月に撤退し、豊田通商が株式承継本格稼働からわずか2年、採算や品質改善でもハードル
2025年01月14日【積水化学工業】再生材100%の雨水貯留材の販売伸長需要増に対応した高品質の原料確保へ
2024年09月09日【2024年度下期 PETボトル入札結果】上期より35円上昇し、落札単価-84.5円/kgに協栄産業グループが巻き返し、東西格差薄まる
2024年01月26日【シタラ興産】埼玉で一廃・産廃焼却施設に122億円投資2027年に稼働予定、年間1万5000MWの発電も
2023年01月23日【東京23区】全区でプラスチック脱焼却へ、プラ新法後押し 一括回収のモデル実施、残す3区でも検討進む
2024年12月27日 コラム
米空軍のフライトジャケットに由来する MA-1 ジャケット。東京・神楽坂で3日間限定のポップアップストアで販売[...]
2024年12月23日 コラム
ひと昔前は、大手流通・小売企業が廃棄物や資源物で収益を得る発想はほとんどなかった。しかし今では、各店舗で出る資[...]
2024年12月09日 コラム
韓国・釜山で開催されたプラスチック条約交渉会議。会場には各国の文化を映し、パナマハットを被る人やインドネシアの[...]
2024年12月02日 コラム
プラスチックの原料となる化学物質には有害性を持つものも少なくない。そこで「化審法」という法律がそのリスクを評価[...]