11月に思い立って、ケニアのナイロビに取材に行くことを決めた。プラスチック汚染対策条約の策定に向けた交渉会議が開かれるが、日系メディアが1社も来ないと聞き、千載一遇のチャンスと感じたからだ。ただ、さすがにアフリカは取材・旅行含めて、未踏の地だったので、不安も大きかった。実際、手続きにはそれなりの労力を要した。ビザ発行が必要だったり、日本ジャーナリスト協会に慌てて登録し、メディア証を発行してもらったり。現地の状況収集については、業界きってのケニア通である白井グループの滝口氏から多大なアドバイスを頂いた。
▼日本からケニア・ナイロビまでは、ドバイ経由で約20時間。ジョモ・ケニヤッタ空港に降り立つと、入国検査の施設は天井の配管がむき出し。日本でいう物流倉庫のような風情で、経済力をまず実感する。タクシー(ほとんどが白タク)を利用すると、トヨタの中古車ばかりでガソリン高騰に喘いでいた。道路はまだ整備途上にあり、現地の人が縦横に歩く姿をよく見かけた。そんなナイロビにはUNEP(国連環境計画)の本部があり、広大な敷地内に約2千人のスタッフが働く。サバンナの大地近くで地球の息吹を感じながら、将来の環境問題を考えるにはうってつけの場だった。
▼取材したINC-3(第3回交渉会議)は、全5回を予定するうちの中間地点。2024年末までの合意を目指している。今回は①ゼロドラフト(たたき台)の議論、②会期間作業の進め方が焦点だった。ところが、議論は遅々として進まず。①は収斂させるどころか、各国からの提案で膨らんだ改訂版となった。②は合意までのタイトなスケジュールを考慮すると不可欠だったが、一旦ストップがかかった。国によって野心的な条約案への積極性と消極性がはっきり分かれた会合であった。環境NGOから「がっかり」との声も漏れたが、国際交渉の躍動感に初めて触れられた刺激的な機会だった。
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