2024年7月29日 PJコラム 

【コラム】零細企業も迫られる労働条件の改善

PJコラム

 「従業員には長く働いてもらいたい」とある役員が何度か口にしていた。人手不足の今、現在の従業員の働く環境を整え、できるだけ長く勤めてほしいという思い。現場作業の暑さ対策としてファン付作業着を支給したり、熱中症予防のために飲料を配布したりするなどの気配りも。そんな会社の思いを受け止めてか、揃いのシャツを着たスタッフたちの様子は、いきいきとしていて活気があった。

▼年金法改正により、一部のパート・アルバイトの社会保険加入が義務化される。対象が段階的に拡大され、9月上旬頃までに日本年金機構から通知書類が届く。対象企業は社内準備が必要で、厚労省は社内での説明会や個人面談の実施を勧めており、面談の際には、報酬比例部分が上乗せされる2階建て年金になることや保障の充実など加入のメリット、その後の労働時間などを丁寧に説明せよとしている。

▼社会保険加入を機に、パート従業員が「年収の壁」を気にすることなく勤務時間を増やしたり、キャリアップを目指して、より責任ある仕事をしてくれたりするようになれば、人手不足打開につながりうる。企業はキャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)などの支援も受けられる。厚労省の有識者懇談会は従業員数51人未満の企業についても「撤廃の方向で検討する必要がある」とし、将来的には同条件は撤廃される方向。早いうちからの社会保険整備は処遇が良いというアピールポイントにもなろう。

▼だが保険料は労使折半となることから企業負担は増える。当初は助成金を活用しても、人件費の増加は以後継続する。最低賃金引き上げの検討も進んでいる。こうした社会情勢を踏まえれば、処理費の引き上げや、有価物の付加価値を上げていくことにも目を向け、検討、調整していく必要がある。

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