日用品メーカーである花王は、洗剤などのプラスチック容器包装のつめかえパックの展開を進めてきたが、次なるステップとして容器包装の資源循環に取り組む。具体的には、使用済みつめかえパックを再び容器に戻す水平リサイクルを実現させ、2025年中にも再生材を使った製品の市場投入を目指す。同社の和歌山研究所では、つめかえパック由来の再生材をバージン材とほぼ同等の性能まで引き上げる技術を開発中。いかに回収量を底上げし、再生コストを抑えて価格をバージン材に近づけていくかも課題だ。同社はリサイクルとクリエーションをかけ合わせた「リサイクリエーション」という概念を提唱。消費者が店舗などに持ち込める回収システムの構築も進め、参加型・共創型のリサイクルシステムの構築を目指す。
花王の「花王サステナビリティレポート2022」によると、同社はボトル容器やつめかえパックなどプラスチック包装容器として年間10万6千トンのプラスチックを使用している。1990年代後半より、プラスチック使用量を減らすため、つめかえパックの展開を進め、これまでに約8割が置き換わった。だが、プラスチック容器包装に占める再生材の使用比率は1.3%に留まり、プラスチックの資源循環という観点ではまだまだ取り組む余地があった。今後は使用率の向上が求められており、同社は来年にも2030年のプラスチック再生材の使用目標を公表する予定だ。
同社が2016年から取り組みをはじめたのが、使用済みつめかえパックの回収~リサイクルの実証実験「リサイクリエーション」だ。上勝町、鎌倉市、女川町、石巻市、北見市の5地域でNPOや教育機関などと連携し、回収ボックスを設置。回収品から、レンガ大のブロックや植木鉢に再生し回収協力者に提供した。回収から再生のプロセスを「見える化」することで、リサイクルの啓発を行い、回収量を毎年増やしてきた。
社会全体で行うリサイクルにするため、2020年9月には、異例ながらライバル企業であるライオンとも協働して「リサイクリエーション」活動に取り組むこと、水平リサイクルを目指すことを公表した。まずは、小売大手イトーヨーカ堂の協力のもと、2020年10月から実証実験としてイトーヨーカドー曳舟店(東京都墨田区)の店頭に専用の回収ボックスを設置。消費者から洗剤やシャンプーなどの使用済みつめかえパックの回収を始めた。曳舟店が選ばれたのは、花王の東京研究所とライオン本社が墨田区に所在していることもあった。一年間で集まったのは約9500枚。異物が入っていないか、容器の洗浄と乾燥といった分別ルールが守られているかなども確認した。
2021年からはドラッグストアのウエルシア(ウエルシア薬局㈱、東京都千代田区)とも協力、都内と埼玉県内の30店舗で拠点回収している。ドラッグストア業態に適合した資源回収のしくみを構築するため、導入から運用まで検証を重ねながら実施している。花王の製品をウエルシアの店舗に運ぶ物流企業のハマキョウレックスの帰り便を利用して、使用済みつめかえパックを戻す物流ルートも試験的に導入した。
そして神戸市と企業18社(2022年11月現在)が参加するプロジェクトが「神戸プラスチックネクスト ~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~」である。参加企業の内訳はメーカー12社、小売4社、リサイクラーが大栄環境、アミタホールディングスの2社である。花王が神戸市から打診を受けたことから始まった。実施にあたり、神戸市と花王は「できるだけパブリックな取り組みにする」という方針を定め、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて異業種で連携している団体「CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)」(東京都千代田区)の会合でCLOMA参加企業に呼びかけ賛同者を募った。集まった企業には、花王の水平リサイクルを目指した技術開発についても、社会実装に向けた課題を共有している。
神戸プラスチックネクストによる拠点回収では、全76店舗(ウエルシア11店舗、コープこうべ34店舗、光洋9店舗、ダイエー22店舗)につめかえパックの回収ボックスを設置している。これまでの実証実験の結果から当初は年間約5トンが集まる計画だったが、2022年4月末までの7ヵ月で580kgにとどまっており、さらなる市民への認知拡大を目指すとしている。
ちなみに、回収推定量の試算はこうだ。他事例での初年度の回収実績が月に5kg程度/店であり、初年度の目標数値として、「5kg×76店×12か月」から5トンとした。
花王では、「リサイクリエーション」活動で集められた使用済みつめかえパック容器の一部を、水平リサイクルを実証するための原料として活用してきた。2021年6月に和歌山研究所(和歌山県和歌山市)にパイロットプラントを設け、リサイクル技術の開発と検証を進めてきた。
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