1977年に創業し、長年、廃プラスチックのマテリアルリサイクルを手掛けてきた㈱近江物産(本社:滋賀県栗東市、芝原茂樹代表取締役会長)。日本のマテリアルリサイクルの比率は21%だが、その先駆者として再生プラスチックの国内循環に取り組んできた。現在、年間2万トン前後の有価プラスチックを扱っているが、昨今の再生プラブームが訪れる前は、国内での流通は困難の連続だったという。量や品質の安定した資源プラを仕入れ、新たな用途開発にも奔走するとともに、物性向上のノウハウを磨き付加価値を高めてきた。こうしたマテリアルリサイクル市場も、他のリサイクル手法の台頭や消費者の価値観の変容、また大手企業・商社の参入などによって、大きな変化に直面している。
同社がある滋賀県栗東市は、琵琶湖の南東、大津市から東に13キロほどのところにある。工場の広さは約3000坪で、周辺には食品や建材などの工場が多く立地している。創業当初から同じ場所で事業を営むが、徐々に隣接地を買い足していったという。大半は自社所有地だが、一部は借地もあり、現在6棟の工場建屋の中に、破砕機や洗浄機、押出機などの設備を備えている。同社が仕入れる資源プラスチックは年間約2万トン。すべて有価で購入している。その由来は工業部品が60%、物流部品が30%、建設部品やその他が10%ほどとなっている。ペレットに加工した後の出荷先の用途も、おおむね近い比率だ。
同社が創業したのが1977年。当時、飲料容器はびんの全盛期で、ジュースびん・ビールびんの運搬用にプラスチックケースが大量に使用されていた。同時に食品業界では、衛生面から物流用パレットを木製からプラ製へ切り替えるニーズがあった。同社は破損・廃棄されたプラスチックケースを回収して、物流用パレットに再生し始めたことが原点だ。用途は違えど、廃プラの排出元が再生品の出荷先でもあるため、需給がバランスし、循環の流れを築いた。商社を介してキリン、サントリー、アサヒといった大手飲料メーカーと徐々に取引を増やし、同社の再生プラスチック事業の足場を築いた。だが1990年代以降、飲料向けの容器では缶やPETが台頭し、プラスチックケースの発生量が減ってきた中で、多様なプラスチックを取り扱うことで事業の幅を広げてきた。
現在、シェアが大きいのが廃バッテリー容器だ。主に自動車用に使われるバッテリーのプラスチック容器の再生を手がけ、同社だけで30%近いシェアを握るという。バッテリー溶液には希硫酸が含まれるため、専門業者が廃バッテリーの中身を処理した後、破砕・洗浄したプラスチック片を受け入れる。これらの資源プラをペレット化し、再び自動車素材向けの原料として出荷するわけだ。いわば自動車部品から自動車部品への水平リサイクルを実現させている。
また、ある自動車メーカーとは補修交換バンパーのリサイクルシステムを開発した。全国各地のディーラーで、補修交換で出たバンパーを協力会社が破砕またはペレット化し、同社が一手に引き受ける。リペレットするなどした再生プラを、再び自動車部品の原料として納めている。
また大手のトイレタリ―メーカーのトイレタンクの内側に使われる結露防止材の原料として、再生プラが月間150トンほど使われている。また、建材メーカーにはスペーサー、基礎パッキン材等として100トンほどを供給。こうした身の回りの消費財の中でも、目に見えないところに再生プラが原料として使われている。
従来、プラスチックの再生材を使うことは、積極的に表示されなかったり、目に触れる場所に使うことを避けていた面もある。だが、企業のサステナビリティや排出者責任が問われる中で、消費者の意識も変わりつつあり、より積極的に使用する機運が高まってきた。ただ、日本の製造メーカーの要求品質が下がることを意味するわけではない。同社が培ってきたような「ものづくり」の視点でのプラスチック再生のノウハウが活きてくるのだろう。
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