【亜星商事】
中国工場を閉鎖し、日本で廃プラ月1000㌧をペレット化
国内ルート向けの資源プラ確保、古紙問屋に期待 FREE

本社工場の外観

 古紙問屋が小売店や物流施設から段ボールを回収する際、合わせて廃プラを引き取ることが増えた。こうした廃プラの大半が中国向けに輸出されていたが、今年から輸入規制によってほぼ全面ストップ。代替国の東南アジア諸国も規制強化に動いたことで、いよいよ行き場を失いつつある。約20年間、廃プラの輸出・加工の実績がある亜星商事㈱の山下強代表取締役はこうした変化をチャンスととらえ、新たなリサイクルルートを探る。特に分別や品質確保、サプライチェーンの観点から、古紙問屋が廃プラリサイクルのカギを握るとみて、大きな期待を寄せている。

国内リサイクルの課題は40万トン

廃プラのマテリアルサイクル

 中国や東南アジア向けの輸出が閉ざされ、行き場を失っている廃プラはどのくらいあるのか?一般社団法人プラスチック循環利用協会の資料によると、2016年に日本から海外に138万トンの廃プラが輸出された。その内、130万トンは中国に輸出され、ほとんど使用済品であったと想定される。

 中国に輸出した使用済品の内訳をみると、ペットボトルが35万トン、包装用フィルムが20万トン、家電・筐体(外装フォーム)が17万トン、発泡スチロール梱包材が6万トン、その他の50万トン位は、いわゆる軟質MIXと硬質MIXという混合品ではないかと、山下社長は推計する。実は、35万トンのペットボトルは既に取り合いが始まり、発泡スチロール梱包材も史上最高値を付けており、行き先は別に困らないという。50万トン位の混合品が国内のマテリアルリサイクルに向かないもので、東南アジアに輸出してもトラブルが起こすため行き場を失っている。これらはサーマルリサイクルするしかないようだ。国内リサイクルとしての課題は、合計40万トン位のフィルムと家電品ではないかと、山下社長は試算する。

中国の現地加工と日本でペレット化の大きな違い

 亜星は、1997年に中国で廃プラ輸入ライセンス制度の発足と同時に、中国へ進出し、100%の日系企業として再生ペレット工場を設けた。まさに、廃プラ輸出ビジネスの先駆け的存在だった。昨年まで同社の廃プラの輸出量は、月にコンテナ100本単位に上った。すべて日本から調達して、出荷地域も北海道から九州まで全国1円に渡った。今年から中国輸入ライセンス制度のほぼ全面停止によって、同社も100人以上の従業員を整理し、中国工場の閉鎖に追い込まれた。

 事業の転換を迫られた同社は、今年から日本の茨城県にある自社工場で、再生ペレットの量産体制を立ち上げている。まず月間500トンのペレット生産体制を築き、10月までに月間800トン体制まで拡張。さらに年内に月間1,000トン体制に達する見通しだ。

 再生ペレットの加工を日本にシフトしたわけだが、中国でのやり方をそのまま移転することは不可能。というのは、中国には比類なき廃プラの対応能力があったことが大きい。輸入した廃プラの受け皿は中国全土にリサイクル業者の集約地が数カ所あり、合わせて1,000社ほどが集まっていた。日本の廃プラは小ロット多品種であるが、中国の廃プラ業者の集積地に搬入したら、小ロットを大きなロットにまとめられ、自社が加工しないプラスチックの種類も近隣他社に転売すればよかった。そのような総合的な対応力は中国以外の所で再現できない。日本国内で再生ペレット加工を行うならば、いかに種類の限られた資源プラを、効率よくペレット加工に必要なロットを集めるかが鍵になる。

 中国では人海戦術による前処理加工が可能であったから、今まで混合品を輸出できた。日本では人件費も高い上に、人手不足であることから、単品又は、自動ラインによる前処理可能な廃プラではないと、国内リサイクルでは不適合品になる。資源プラの荷受基準を確立し、発生元及び回収業者による協力体制の構築が求められている。

 

茨城に本社工場、千葉にも拠点開設

使用済品も由来分野

 東京都心から約90キロ離れた茨城県笠間市内に亜星商事のペレット加工工場がある。敷地面積は約4,000坪。従業員約30名を抱え、24時間体制でペレットを生産している。粉砕洗浄脱水設備4ラインや、ペレット加工機5ライン等の生産設備がある。

 受け入れる廃プラの品種は、ストレッチフィルム、LDPE(低密度ポリエチレン)とHDPE(高密度ポリエチレン)のフィルム、ペットボトルのキャップ、HDPEのケミカルドラム、タンク及び、ジャバラ等多種である。荷姿はバラ品、ベール品、粉砕品など対応できる。

 工場内には廃プラ洗浄廃水処理施設がある。処理した水は循環使用している。同社では、化学物質などが付着した廃プラを受け入れておらず、あくまでも水で汚れを落とす洗浄処理だ。

 8月末には都心に近い千葉県野田市に新工場を開設した。トラックスケール、破砕機、プレスを導入し、バラ品の受け入れと硬質系プラを中心に前処理を行う。野田工場は都心まで30キロの距離で、神奈川エリアからも受入れが可能だ。いずれは野田工場でもペレット加工設備の導入を視野に入れている。

古紙問屋と協業・提携を模索

 使用済み廃プラの集荷を拡大に向けて、山下社長が期待するのは古紙業界だ。リサイクルの歴史があって、業界団体も組織化されており、8割の古紙が分別回収され、高い品質を保っているからだ。古紙ヤードが全国に2,000カ所近くあることも、廃プラの回収ルートとして活かせないかと着目する点だ。廃プラには統一的な分別ルールや品質基準が確立されておらず、古紙再生促進センターが浸透させてきたような基準づくりが今後は求められている。

 例えば、梱包資材として使われる代表的な品種として、①ストレッチフィルム、②PPバンド、③レジ袋、④ひもがある。この4品種だけでもきっちり分ければ、資源化できるという。古紙問屋では段ボールや新聞はきれいに選別するが、これまで異物である廃プラは一緒くたにされてきた。それを品種別にきっちり分ければ、有価で引き取れるという。

 品種別に分けるだけでなく、廃プラ工場に持ち込む前の段階で、室内保管もしくはラップを巻くなどし、廃プラの保管状態にも気を配って欲しいという。雨水が廃プラに付着すると、乾燥させる必要があり、また汚れが付着しても洗浄する必要が出てくるからだ。廃プラの水分率は、おおむね5%以下が望ましいそう。大量の水分が付着すると、ルーダー機で、発泡反応することがあるからだ。

 亜星として、全国の他地域に進出する考えは今のところなく、どちらかといえば他社とタイアップしていきたいという。廃プラの回収・選別・前処理は古紙問屋などにゆだねて、同社はペレット化技術のノウハウなどを提供したいという。古紙業界も巻き込んだチームづくりによって、廃プラの国内リサイクルへ挑戦していく考えだ。

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