2022年2月25日 PJコラム 

【コラム】

PJコラム

 炭素繊維が飛行機の機体に用いられるということを知ったのは、1980年代後半、航空機分野での日米のテクノナショナリズムが物議を醸した頃。軽いのに鋼鉄と比べて引っ張りに強い比強度があり、比弾性(弾性率/密度)に優れた“すごい”ものと聞いたが、髪の毛をわずかに太くしたような黒く細い繊維が、一体どのようにして飛行機に使われるのか想像もつかなかった。

 炭素繊維はいま、機体の軽量化に貢献するCFRP(炭素繊維強化プラスチック)として、航空機の垂直尾翼や水平尾翼、フラップ、着陸装置ドア、圧力隔壁など多くの機体部位に使われるようになっている。その用途は自動車、産業機器、家電やスポーツ用品など民生品にも広がっている。用途が広がり、使用量が増えればリサイクルの検討が必要だ。しかしCFPRの製造過程で出る廃材や使用済みのものは、通常の焼却炉では処理できず、大部分は埋め立て処理されているそうでリサイクル技術の確立が望まれている。

 CFPRにするのに使われるプラスチックは、炭素繊維の1本が切れても、その影響を広げない作用を持つ重要な役割がある。リサイクルの際には、そのプラスチックを取り除き炭素繊維のみを回収することになる。炭素繊維の物性を損なうことなくプラスチックを取り除く技術が難しいとされる。

 リサイクルするには、熱分解法、液化法、物理的手法、電解酸化といった方法があるが、熱分解法が有力だという。CFPRのリサイクルでは炭素繊維が主役ではあるが、取り除かれたプラスチックはどうなるのか。複合材料のリサイクルにも目を向けたい。

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