2023年1月7日 PJコラム 

【コラム】コロナ感染と化学的発明

PJコラム

 昨年暮れに不覚にもコロナウイルスに感染してしまい、暫く床へ伏せる憂き目にあった。これまで経験した風邪症状やインフルエンザとも異なる症状――頭痛や倦怠感が延々と続き、いっこうに回復しない状況はやはり死に至らすウイルスとの実感もあった。集中力・思考力が続かずろくに記事が書けない日々を過ごし、健筆をふるうためには身体の健康維持あってこそとの思いを、新年改めて心に刻んだ次第である。

▼この新型コロナウイルスで誰もが経験した医療処置といえば、mRNAワクチンとPCR検査である。前者はハンガリー人の女性研究者であるカタリン・カリコ博士がわずか1年足らずで開発した新型ワクチン。これまで世界で130億回ほど接種されており、昨年のノーベル賞候補とも目されたが、受賞は逃している。ちなみに、中国はこの海外製ワクチン導入を拒み続け、国内産にこだわっていたところ、ゼロ・コロナ政策を緩めた今となって、一挙に感染が爆発的に拡がった。

▼PCR検査は古く、40年以上も前に発明されていた。DNAの断片である唾液などから遺伝子情報を増幅し、その配列の異常から感染有無を検知するという手法である。この発明によってキャリー・マリス博士は、1993年のノーベル化学賞にも輝いている。面白いのが、このマリス博士の破天荒っぷりだ。サーファーで女好き、LSD服用歴を吹聴し、宇宙人との遭遇も語っていた。PCRを思い付いたのも、彼女とのデートのドライブ中だったという。「社会課題の解決」といった目的意識が先行する時代にあって、柔らかな発想が後に人々の役に立つという結末も感慨深いものがある。

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