廃プラのケミカルリサイクルが本格的に社会実装される段階に入ってきた。今年は複数の新規プロジェクトが立ち上がる。スケールアップに向けた技術は確立済みだが、廃プラ原料の調達や収率の向上、処理・生産コストや販売価格といった壁をどう乗り越えるのか。化学工業メーカーを中心に構成される日本化学工業協会(日化協)は、将来のあるべき姿として2030年までに150万トン、2050年までに250万トンのケミカルリサイクルの拡大目標を掲げる。今年は目標に向けて大きく前進する年となるのか、注目されるだろう。
今年、稼働を予定しているのは、①ENEOS・三菱ケミカルによる鹿島工場の油化事業、②PSジャパンによる水島工場のスチレンモノマー化事業、③東洋スチレンによる米アジリックスの技術を用いた千葉工場のスチレンモノマー化事業、④DICとエフピコの協業による四日市工場でのスチレンモノマー化事業の4つである。
①は本邦初の大型ケミカルリサイクルプラントで廃プラの処理量は年間2万トン。原料調達は、リファインバースを窓口に、産廃系廃プラ(PP、PE、PS、PET)を使用するとされている。隣接の石油精製と石油製品のプラントと連携しながら、各種商品に再生プラスチックとして使用する。ISCC PLUSによる認証も受けており、廃プラ原料の調達から製品の製造までを含むサプライチェーンを適切に管理することで、再生プラの信頼性を確保する。
②、③、④は実証設備であり、処理量も年間3千トンである。使用する原料も限られた品目だったり、限られたルートとなっている。廃プラ原料をどのルートからどの程度、どういう品質で集めるかが、コストを左右することもあり、ポイントの一つとなっている。
東洋スチレンは、顧客の工場から出る産廃のPSが中心であるが、ケミカルリサイクルの工場設備が立地する市原市からも、年間数百トンのPS製の使用済みトレーやカップを受け入れる。
他に2025~2030年の間に、計5つのプロジェクトが動いている。出光興産は油化設備に投資する最終投資決定とともに、環境エネルギーと新たな合弁会社、ケミカルリサイクル・ジャパンを設立すると発表したばかり。出光興産は千葉事業所の隣接エリアで、2025年中にも商業運転の開始する。
岩谷産業・日揮HD・豊田通商の3社協同による事業では、名古屋港付近で年間処理能力8万トンのガス化設備の建設に向けて動いている。レゾナックの川崎工場のプラントライセンスを供与された日揮がプラントを設置するもので、レゾナックは廃プラからアンモニアを製造したが、同施設では水素を製造する。原料の廃プラは豊田通商が窓口となって調達・供給する。
三井化学と独BASFは、2025年以降、年間25万トンの化石燃料由来の原料を、再生原料に置き換える方針。住友化学はリバーと提携し、自動車由来の廃プラを高度選別・再利用し、千葉工場などで年間20万トンを再生していくとする。ただし、これはケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルの両手法による合算値である。
今回、アールプラスジャパンの横井社長に話を聞いた。同社は2020年4月に設立し、ケミカルリサイクルの社会実装に向けた検討を進めている。参画企業の数は当時の12社から現在は40社まで増えた。サントリーや東洋紡、レンゴー、東洋製罐などといった設立メンバーのほか、容器包装メーカーや消費財メーカーが参画している。廃棄物系では現在J&T環境だけだが、複数の企業からの打診も受けているという。
同社は、米アネロテック社の廃プラ処理技術を日本に導入し、ケミカルリサイクルによるプラスチック循環を実現しようというアプローチ。参画する各企業が排出した廃プラなどを、再び容器や素材などとして循環し、再び商品化できることへの期待が大きい。
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