廃プラのケミカルリサイクルのガス化手法で、神鋼環境ソリューション(神戸製鋼所のグループ会社)や三菱ガス化学、大栄環境グループら5社が協働し、実証プラントでメタノール製造を試みる。大阪府エコタウン内で来年9月に稼働させる予定だ。これまでガス化では、昭和電工によるアンモニア化、積水化学工業でエタノール化への先行例があったが、メタノール化は国内初の試み。将来的には年間6万トンの廃プラの処理能力を想定し、異物などを多く含む廃プラの循環利用を進める手段として注目される。
神鋼環境ソリューション(兵庫県神戸市、佐藤幹雄社長)を代表事業者として、大栄環境(大阪府和泉市、金子文雄社長)とそのグループ会社である DINS 関西(大阪府堺市、大田成幸社長)、三菱ガス化学(東京都千代田区、藤井政志社長)、三菱化工機(神奈川県川崎市、田中利一社長)の5社が提案した「廃プラスチックのガス化及びメタノール化実証事業」がこのほど、環境省によるCO2排出抑制に資する補助金対象実証事業に採択された。廃プラのケミカルリサイクルが期待される中で、ガス化によるメタノール合成を実用化し、新たな循環システムの構築を目指す。
同実証事業で廃プラをガス化するのは、各地の焼却施設で採用実績を持つ神鋼環境ソリューションの流動床式ガス化炉。高温で流動する砂の上で廃プラをガス化する仕組みで、汚泥廃棄物のような低カロリーのものから廃プラ等の高カロリーのものまで幅広いごみを処理できる。このガス化炉で雑多な廃プラを分子レベルまで分解し、合成ガスを作り出す。炉の下部に設けた不燃物の排出機構からは、金属やがれきなど異物を排出する。組成や品質にバラつきのある廃プラでも連続運転が可能だという。この流動床式ガス化炉でガス化によって得られた合成ガスからメタノールを合成する。
5社の共同実証プロジェクトが立ち上がったのが今年5月。流動床ガス化技術を持つ神鋼環境ソリューションが中心となって、大栄環境が性能試験のための供試体を、DINS 関西が実証試験の場所(大阪府エコタウン内)をそれぞれ提供する。実証プラントは11月に着工し、2023年9月の試運転開始を目指す。大阪府と堺市の協力も得ることになっており、それぞれ大阪湾の海洋プラ、家庭ごみなどの廃プラを提供する。大阪府は大阪湾に流入する海洋プラが毎年62.8トンに上っていると推計。また堺市は容リプラを年間5400トン収集し、現在は容リ協会にリサイクルを委託している。落札処理単価は、2021年度は51.5円/kg、2022年度は55.7円/kg。同プロジェクトにおいても、この処理単価がベンチマークになってくるだろう。
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