来年からバーゼル法改正によって輸出されていた一部の廃プラが国内に還流し、潤沢な原料となる中で高品質なRPFの需要は高まってきそうだ。RPF需要の約7割を製紙業界が占めており、特種東海製紙グループの㈱レックス(福井里司代表取締役)はRPFの自家供給率を高め、品質向上にも取り組んでいる。3拠点の1つでスクラップ&ビルドしたばかりの長泉工場を訪問したのでレポートしたい。
今年3月に特種東海製紙グループのRPF製造会社であるレックスの長泉工場が開設した。同工場は沼津工場の閉鎖に伴って移転したもの。特種東海製紙の長泉物流センター内の一角に設けた。もともと同センターにはRPF用倉庫を備えていたが、新たにRPF製造設備や原料置場などを新設し、RPF製造拠点として稼働を開始した。
同社のRPF工場は静岡県下で3拠点ある。県中部に新東海製紙(島田市)内の島田工場と同市内の金谷工場。そして東部で移転した長泉工場(長泉町)である。旧沼津工場は設備が老朽化していたことや稼働時間に制約があり、移転により生産効率を高める狙いがあった。また旧沼津より、RPF供給先のボイラーのある特種東海製紙三島工場までの距離が2キロほど縮まり、物流効率も向上している。
生産量は、島田工場で月間2500トン、金谷工場で月間1100トン、そして長泉工場で月間1400トン。合わせて静岡県下で最大規模の計5000トンの供給能力となった。長泉工場は旧沼津より生産量が500トンほど増えた。3交代で24時間稼働が可能になったことなどに拠る。ただし、現状、長泉工場のRPF生産量は月間1000トンほど。今後、RPFの原料調達状況等により2交代制を3交代制にシフトさせていく考えだ。
グループ内でのRPF需要としては、新東海製紙のバイオマスボイラーで月間5000トン、特種東海製紙三島工場のバイオマスボイラーで月間1800トンを使用する。計6800トンと消費量が上回り、不足分を外部から調達している。コロナ禍の影響で産廃の発生が減り、他RPF工場では稼働率が下がった例もあるが、同社の場合、ほぼ影響は起きていないという。
長泉工場のRPF施設の敷地面積は、約4000平米。①原料置場、②RPF製造施設、③製品倉庫の主に3つの建屋から成り、他に事務所建物がある。①と③は既存の倉庫建物を活用したもの。①は特殊紙の製品出荷時に使うパレットの工場だった機能を他所に移して活用。③は特種東海製紙三島工場向けのRPFのバッファー倉庫だったので用途は変わっていない。②と事務所は新たに建屋を設け、破砕設備とRPF成形機を一新した。製造するRPFは押し出し式で直径35ミリの仕様。両設備は御池鉄工所製。設備投資額は約6億5000万円に上った。既存の建屋を活かしたことで、初期投資を抑えた。
産廃の中間処理許可は2018年1月に取得済みで、同社は産廃処理業者の優良認定も持つ。処分業としては破砕と圧縮固化の許可をそれぞれ取得した。従来、RPF製造業は破砕から圧縮固化まで一連の許可取得であったが、近年は破砕と成形が別々の許可となっている。これは破砕段階に留めた処理サービスも提供することができるニーズに応えたもので、破砕後に取り出してフラフ燃料として出荷することもあるからだ。ただ同社の場合、破砕処理だけのサービスは現時点では想定しておらず、設備もそのような仕様になっていない。RPFへの加工コストは一般的に15~16円/キロ前後といわれ、破砕だけで7~8円/キロ。フラフ燃料は破砕だけで済むが、圧縮や物流のコストが膨らむため、コストメリットはないともいわれる。
RPFの供給先はすべて自社グループの特種東海製紙三島工場向けで、長泉工場から6キロほどの距離。グループの物流会社を使い、1日に5~7台(50~60トン)を出荷。長泉工場の製品倉庫は100~150トンの保管能力で、今後生産量が増えたり、特種東海製紙三島工場がボイラー点検の際には、外販していく可能性もあるという。
長泉工場の従業員は約14名。今年1月、RPF製造事業は外国人技能実習制度の業種認定でパブコメを通っており、今後、技能実習生を受け入れ可能となる見通し。同社としては、雇用情勢との兼ね合いとして様子見の姿勢だが、さらにRPF工場を拡張するような際には検討もしていきたいとしている。
RPFのグループ内供給が多いものの、品質第一の方針を掲げている。RPF中の塩素分を低減させることは、ボイラー炉の延命にも繋がるからだ。島田工場ではJIS規格取得を申請中で早ければ年内にも取得できる見通し。
長泉工場内でも、品質検査室を設けており、チェック項目は①塩素、②水分、③カルシウム、④アルミ分の4つ。水分は製造直後と出荷時の2回検査する。こうした自主検査だけでなく、1ヵ月分のRPFサンプルを溜め置き、外部の第三者検査機関でも調査して客観的な数値を得ている。
塩素分は0.3%以下が基本で、そのために低塩素分の原料を選りすぐる。排出元は分別に手間がかかるため、同社は産廃処理費の値上げを抑えてきた。塩素分に拘ると同時に処理費に差を設け、インセンティブを与えてきたわけだ。また月に1~2回、ランダムに受け入れた産廃の展開検査を行い、処理契約以外の金属や塩ビなどが含まれていないか、組成分析も実施。結果を排出元に通知し、分別方法の改善やRPF品質の向上に繋げている。
バーゼル法改正によって輸出不可となる廃プラの発生増が予想されるが、現時点での影響は未知数。実際に排出先で出たモノを見なければ、判断できないことも多いからだ。ただ、混合系のMIXプラや古紙とプラの複合素材の処理量が増えていく兆しはある。RPF事業は、設備の初期投資額が大きく、コスト圧縮と長時間稼働でいかに生産効率を上げるかがカギとなる。その中で、いかに良質な原料を集め、高品質なRPFを安定供給できるかが競争力に繋がっていくのだろう。
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