プラリサイクルの歴史は、2000年前後から大きく2つの潮流に分かれた。1つは先進国による手法。米国や欧州に代表的されるように、大型の機械選別による合理化を突き詰めた方式である。混載した再生資源を、磁選機やアルミセパレーター、風力選別機、比重選別機、光学選別機等のハイテクを駆使した種々の選別機械によって、それぞれの樹脂に分けていく。合理的な手法を好む欧米では、この形を突き詰めていくことになった。日本でも、光学選別を使った容リプラのマテリアル化施設では、自動選別によって95~97%ほどの精度で分けることができるという。問題はコストがかかり過ぎることだ。
もう1つは途上国を中心にみられる手法で、マンパワーによるものだ。2000年代初頭から特に中国で培われた。その背景には、中国で地方出身の出稼ぎ労働者による豊富で安価な労働力があった。中国がWTOに加盟した2001年の平均賃金は4700元/年(=約6万9千円)だった。廃プラの選別作業に携わる人々はもっと安かったであろう。中国では、このマンパワーに頼る選別が絶大な力を発揮した。日本から大量に運び込まれた廃プラは、まず大きな水槽に浸ける。これが第一選別の工程で、比重が水より軽いPEとPPは水に浮き、PSとPVC、PETは水に沈む。そして乾かした廃プラを更に素材ごとに分けていくのだが、工場の中には巨大な扇風機が設置されており、廃プラを飛ばして、飛ばした距離でおよその素材を判別する。簡単に言うと、水槽が比重選別、巨大扇風機が風力選別の役割を果たしている。こうしたアナログな設備とマンパワーの結集が、当時の中国における廃プラリサイクルの代名詞だった。
2018年に廃プラの輸入禁止を決めたとき、中国の平均賃金は4万9600元/年(=約79万円)と10倍超まで跳ね上がっている。一人当たりの名目GDPも約1万ドルに達するまで成長している。GDPの1万ドルという水準が国家の環境意識を呼び覚ますとともに、マンパワー頼みによる廃プラリサイクルの限界値を示しているのかも知れない。東南アジア諸国でも同様の道のりを辿るのか、注目されるところだろう。
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