2023年3月6日 PJコラム 

【コラム】移ろう優れた建築の定義

PJコラム

 産業系の廃プラでは未だリサイクルが手付かずのものも少なくない。その1つが建廃系の廃プラだろう。一般社団法人日本建設業連合会による2022年6月に公表された建設工事現場での廃プラ組成調査によると、全体のプラのうち47%がリサイクル不可だという。樹脂別にみてPVCが57%、PPが18%、PEが15%、MIXプラが10%。建材由来の廃プラは年間59万トン発生し、産廃の15%、廃プラ全体の7%を占めている。新築や改築時の発生が多いが、経済性を追求するあまり、組成が明らかでもリサイクルが進まない実態がある。

▼建築分野のノーベル賞ともいわれるプリッカー賞。建築家の優れた業績を讃えるもので、日本人でも安藤忠雄や丹下健三ら7名が受賞している。2021年にこの賞を授かったのがラカトン&ヴァッセルというフランスを拠点に活動する建築家ユニットだった。これまで受賞するのはデザイン性が際立っていたり、ランドマーク的な建築設計を手がけたりする建築家ばかり。ところが意外だったのが、この2人が設計を手がけてきたのは、地味で日常に溶け込みそうな建物がほとんどで、決して写真映えするものとは言いがたいのだ。

▼その設計思想は「決して取り壊さず、再利用すること」。既存の建物に付け加えたり、形を変えることで、「トランスフォーメーション(変身)」を試みてきた。建物のポテンシャルを引き出し、ポリカーボネードといった安価な材料を多用しつつ、新たな空間の価値を創り出す手法は、単なるリノベーションに留まらない。限られた資源を活かすという社会批評性も内包しており、建築分野でも持続可能性を求める時代の空気を映した結果というべきか。建築家が生涯に手がけられるプロジェクトの数は限られるが、たった1つの空間が人々の行動を変える力も秘めている。

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