TVでよく見かける中部大学教授の武田邦彦氏は、著書「リサイクルしてはいけない」「偽善エコロジー」で、リサイクルにまつわる様々なからくりや嘘を教示している。氏が最もやり玉に挙げていたのがPETボトルリサイクル。氏曰く、「我々の税金で使用済みのPETボトルを集めて、高い金をかけて選別しているが、結局中国に持って行っている。税金を使って一部の業者が儲けているだけ」とバッサリ切り捨てている。
以前までは、氏の主張も全てではないが一部は当たっていた。回収されたPETボトルの6割~7割が中国に輸出されていた時もあった。しかし時代は変わった。今やPETボトルは国内循環がメインとなり、重要なリサイクル資源の1つとなっている。
その中でも勢いがあるのが、国内飲料メーカーが競って取組むボトルtoボトル。サントリーは将来的には全てのPETボトルをリサイクル原料から生産することを表明。コカコーラも同様に、将来的にリサイクルPET原料の比率を90%まで高めると表明した。これらの背景には、海洋プラ問題を発端とした脱プラの世論を封じるため、PETボトルはリサイクルの優等生であることをアピールする必要がある。2010年からボトルtoボトルの技術が確立し、10年に2万トンだった廃PETボトルの使用量は19年に7万4千トンとなった。
今後は益々リサイクルPETボトルの争奪戦が起きる。前述の飲料大手2社が表明している分だけで、日本のリサイクルPETボトルの総排出量の6割に達してしまう。またキリンや伊藤園もPETボトルのボトルtoボトル市場への参加を表明しており、飲料メーカーがリサイクルPET市場を席巻してしまうのではないかとも言われている。
その状況に最も危機感を持っているのがリサイクルPETを主原料にしているシートメーカー。エフピコやウツミリサイクル、トーシン、クリハラ等があり、全てのシートメーカーで20万トンほどの生産量がある。シートメーカーは主に食品容器に加工されるものが多く、コロナ禍で消費が好調。それ以前の2012年から右肩上がりの生産量が続いている。2019年実績では、シートへのリサイクルPET使用量は13万3千トン。うち食品用トレイ(卵パック・青果物トレイ等)が10万6千トン、ブリスターパック(日用品等のブリスター包装用)が9千トン、食品用中仕切り(カップ麺トレイ、中仕切り等)が3千トン、その他(工業用トレイ、文具、事務用品等)が1万4千トン。リサイクルPETのシート向けの8割が食品用トレイに使用されている。
アパレル・繊維向け使用量は近年は減少している。2011年が9万6千トンでピークだったが、19年は6万3千トン。そのうち衣類向け(ユニフォーム、スポーツウェア等)が2万2千トン、自動車・鉄道関連(天井材や床材等の内装材、吸音材)も2万2千トン。インテリア・寝装具(カーペット類、カーテン、布団等)が8700トン、土木・建築資材(返水・防草・吸音シート等)が6700トン、家庭用品(水切り袋・ワイパー等)が2200トン、身の回り品(エプロン、帽子、ネクタイ、作業手袋等)が1000トン、一般資材(テント、のぼり、防球ネット等)が100トン、その他(糸・不織布等)が700トンとなっている。
以前までは自動車や鉄道の内装材用途が圧倒的に多かったが、近年は衣類用途が増加している。衣類用途も以前はユニフォームや制服といったものが多かったが、現在はスーツ、靴、ランドセルや人工皮革等、多様性に富んでいる。また保湿性に優れた今治タオルにも、廃ペットボトルで作ったポリエステル繊維が使われている。
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