【マイクロ波化学】
マイクロ波利用のケミカルリサイクル、複数が進行中
基礎開発から実証開発ステージで2024年事業化目指す

大阪事務所外観

 マイクロ波化学㈱(大阪府吹田市、吉野巌社長)の技術が、ケミカルリサイクルにおけるプロセスを変えようとしている。廃プラを分解するには大量のエネルギーを要するが、同社が開発した分解技術プラットフォームである「PlaWave®」は、マイクロ波を直接照射することで効率的なリサイクルが可能になる。大阪事業所には実証プラント4基を設けており、化学メーカーを中心に複数のプロジェクトが進行中だ。このうち三菱ケミカルと共同で進めるアクリル樹脂のケミカルリサイクルは2024年度まで、三井化学と共同で進める軟質ポリウレタンフォームは2025年度までに事業化を目指している。今回、同社の大阪事業所のプラントを取材見学し、研究開発本部の木谷径治第1開発室長とエンジニアリング本部の伊藤圭介本部長に話を聞いた。

 スタートアップ企業であるマイクロ波化学のマイクロ波技術プラットフォームに注目が集まっている。製品ブランドメーカー、化学メーカー、商社、小売流通、廃棄物中間処理業者など、プラスチックに関わる様々な企業からの問い合わせや同社プラント見学希望者が、プラスチック新法施行前から“爆発的に”増えている。同社は、かつて「体に悪いかも」「よくわからないからダメ」と受け入れられなかったマイクロ波技術を産業向けに応用してきた。これまでに医薬品から燃料まで80件を超える共同開発を50社以上のメーカーと実施しており、現在も40件を超えるプロジェクトが進行中だ。

 「マイクロウェーブ」、まさに電子レンジのそれである。マイクロ波を使えば、プラスチックに対し効率的にエネルギーを供給し、分解、モノマー化できる。その分解技術プラットフォームである「PlaWave®」をマイクロ波化学が確立し、廃プラのケミカルリサイクルを進める化学メーカーなどとの協業が増えている。

 通常、化学プラントで物質を加熱する際は、物質を入れている容器を加熱し、容器の熱を物質に伝える方法が一般的である。プラスチックを加熱、分解する場合も同様だ。マイクロ波を使ったプラスチックの分解は、マイクロ波を対象物に向けて照射し、直接エネルギーを供給するので、容器を加熱するエネルギーや時間をかけずに、選択的に素早く加熱することができる。

 同社研究開発本部の木谷室長は、自社のマイクロ波の技術について、プロセスの優位性と物質の優位性があると説明する。

 プロセスの優位性とは、エネルギー消費量削減と時間短縮、そして加熱のための大きな容器が不要なことによる設備の小型化である。最大で消費エネルギーは1/3、加熱時間は1/10、工場面積は1/5程度まで削減できるという。従来のケミカルリサイクルの油化手法と比べ、マイクロ波を有効に使うことで、プラスチックを直接化学基礎原料に変換させることができるため、従来の分解油から原料に戻す手法から工程を1ステップ減らすことができる。

 また物質の優位性とは、対象物質を選択的に加熱することにより混ざりものを排除、物性の劣化を抑制することである。同社は電磁場解析、熱流体解析、構造解析等を行い、その様子についてスーパーコンピューターを用いたエンジニアリングシミュレーションによって視覚化している。

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