公益財団法人日本容器包装リサイクル協会(以下、容リ協)が実施する下期のPETボトルの入札の速報結果が29日、発表された。平均落札単価は115.4円/kgと過去最高値を更新した(容リ入札は逆有償が前提なので、有償取引はマイナスで示される)。上期の64.2円に比べて51.2円/kg(80%高)も上昇しており、昨年同期に比べると2.7倍にも上がっている。
従来はバージン原料であるナフサ市況やバージンPET樹脂市況と連動していたが、近年は再生処理施設の増設ラッシュによって、需給のタイト感を色濃く反映。特に飲料メーカーが主導するボトルtoボトルへの引き合いが強く、品質の高い家庭系のPETボトルは争奪戦となっている。
ただ、史上最高値を付けた中で、2つの点に留意しなければならない。
1つは既にバージンPET樹脂市況が下がり始めていることだ。ナフサに連動して下落し、事業系を主とするPETフレークの輸出市況も下がっている。バージンPET市況の軟化は、シート・繊維向けの再生PET需要で影響が大きい。安価なバージンPET樹脂への原料切り替えが起きるためだ。容リルートでPETボトルを高値落札していた再生事業者は、採算面で行き詰まることも考えられ、過去にバージンPET市況が急落して、容リの再入札や途中辞退する事業者が出たケースもあった。市況の節目に差し掛かる中で、過去最高値を付けた下期に容リルートのリサイクルが完遂できるのかが問われている。
もう1つは、容リ協会の落札予定量が減っている点だ。下期の予定数量は9万6540トンと、前年同期より5857トン減った。通年でみても1万3千トン減だ。これはPETボトルの発生量が減っているわけではなく、容リルートでリサイクルを委託する自治体が減っていることに拠る。いわゆる独自ルートに切り替える「容リ離れ」が加速している。今年7月に容リ協が自治体向けに実施した来年度の意向を聞いたアンケートでも、容リ協への委託から外れると回答した自治体が増えたとされる。
飲料メーカーは独自に自治体と提携を結び、特定の地域で排出されるPETボトルの囲い込みに動く。直近でも、コカ・コーラは24日、埼玉県久喜市と提携を結んだことを発表し、サントリーは25日に東京都多摩市と提携を締結したことを発表した。両市ともに従来は容リ協にリサイクルを委託していた。
次週9月5日に容リ協で入札結果の詳細データが公表されるため、おって企業別、地域別などに分析レポートを配信したい。
有料サービスのご契約で、他のすべての記事も全文ご覧になれます。
まずはぜひ1か月の無料トライアルからお試しください。
2025年01月14日【プラニック】 ヴェオリアが昨年12月に撤退し、豊田通商が株式承継本格稼働からわずか2年、採算や品質改善でもハードル
2025年01月06日【リプロ】世界一のプラ製杭メーカーとしてギネス記録に認定「小さな大企業」としてニッチな再生プラ製品を開発
2023年01月23日【東京23区】全区でプラスチック脱焼却へ、プラ新法後押し 一括回収のモデル実施、残す3区でも検討進む
2024年09月09日【2024年度下期 PETボトル入札結果】上期より35円上昇し、落札単価-84.5円/kgに協栄産業グループが巻き返し、東西格差薄まる
2024年01月26日【シタラ興産】埼玉で一廃・産廃焼却施設に122億円投資2027年に稼働予定、年間1万5000MWの発電も
2024年12月27日 コラム
米空軍のフライトジャケットに由来する MA-1 ジャケット。東京・神楽坂で3日間限定のポップアップストアで販売[...]
2024年12月23日 コラム
ひと昔前は、大手流通・小売企業が廃棄物や資源物で収益を得る発想はほとんどなかった。しかし今では、各店舗で出る資[...]
2024年12月09日 コラム
韓国・釜山で開催されたプラスチック条約交渉会議。会場には各国の文化を映し、パナマハットを被る人やインドネシアの[...]
2024年12月02日 コラム
プラスチックの原料となる化学物質には有害性を持つものも少なくない。そこで「化審法」という法律がそのリスクを評価[...]