
年初のベネズエラへの強硬対応に続き、3月にはイランに対する軍事作戦が行われるなど、米国の唐突とも映る判断に世界が振り回されている。同盟国である日本にとっても安全保障面での不安は小さくないが、影響が先に顕在化しそうなのは、むしろ経済面であろう。なかでも波及が懸念されるのが石油化学分野だ。中東地域は世界の原油供給の約2割を担うとされ、日本は輸入ナフサの約7割を中東に依存している。既にアジア向けの原油やナフサの出荷に遅れが生じ始めている。
▼石化製品の契約では、一般に戦争や自然災害など不可抗力による供給不能を免責する「フォースマジュール(不可抗力条項)」が盛り込まれている。既にアジアでは複数の企業がこれを発動し、供給制限の可能性を顧客に通知する動きも出てきた。例えば三菱ガス化学㈱はメタノール、出光興産㈱はエチレンについて供給制限の可能性に言及しており、原料供給の停滞が現実味を帯びつつある。これが川下の自動車や電子材料などの製造に波及すれば、産業全体の混乱につながりかねない。
▼中東由来の原油やナフサの価格は、足元で約3割上昇したとされる。供給不安が長期化すれば、最終製品の価格高騰も避けられないだろう。こうした局面で、再生ナフサを国内で供給できるケミカルリサイクルには注目が高まりそうだ。国内で資源を循環させ、再生原料を安定供給できる静脈産業は、今後の産業基盤を支える存在にもなりうる。地政学リスクが高まった時代において、資源循環は単なる環境対策ではなく国家の産業安全保障そのものへと位置付けが変わる、そんな歴史の分岐点に直面しているのかもしれない。
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