ペットリファインテクノロジー㈱(神奈川県川崎市、伊賀大悟代表取締役)の川崎工場は2004年に㈱ペットリバースが操業開始したのが始まり。同社が2008年に経営破綻した後、PETボトル再生のモデル事業を行っていた東洋製罐が事業継承したものの、収益性確保などの問題を抱え再び経営危機に見舞われた。2018年の4月、親会社JEPLAN(旧・日本環境設計)が東洋製罐から全株式を譲渡され、2021年10月に工場の本格再稼働に至る。国内で唯一、ボトルtoボトル向けのケミカルリサイクル工場を商用運転する同社の伊賀社長に話を聞いた。
――川崎工場を引き受けたJEPLANにはどのような公算があったのか。
「当時はいくつかの可能性を考えていた。JEPLANは2017年に北九州にポリエステル繊維のケミカルリサイクル技術を開発する工場を竣工しており、その技術を導入する商用工場としてこの川崎工場を使うというアイデアがあった。比較的小規模な設備投資と改造で実現できるということだったが、2017年12月に中国の廃プラスチック輸入が止まり、2018年1月にはダボス会議でグローバル企業が2030年までに容器の50%を再生材に変えると宣言したことで潮目が変わった。PETボトルをケミカルリサイクルする事業で収益を上げるように再構築できるのではないかということになった」
「2018年に正式に経営を引き継いだ後、いろいろな飲料メーカーとコミュニケーションを開始した。ボトルtoボトルのケミカルリサイクルの事業は需要があり、収益性も確保できるという手ごたえがあり、2020年の3月にこの川崎工場を再稼働させることを決定。その後2021年5月には試験稼働を開始し、そこで発見された課題の改善を経て、10月から本格再稼働となった」
――PETボトルのリサイクル技術にはメカニカルリサイクルとケミカルリサイクルがある。ペットリファインテクノロジーが手掛けるケミカルリサイクルの優位性は。
「回収したPETボトルには様々な不純物が混じっている。自動販売機横のPETボトル回収ボックスであれば、土砂やその他のごみ、ラベルやキャップも含まれているが、それらはPETではないので不純物になる。当社のケミカルリサイクルは化学的な処理を施してPETを分子レベルまで分解して不純物を除去して再重合し、石油由来原料と同等の樹脂を作る技術。使用済みPETボトルを化学的に分解して分子レベルで不純物を取り除き高純度のBHETを抽出する部分が当社の技術の肝となり、PET製造時に添加された触媒、金属など微小な不純物も取りきることで石油由来と同品質の樹脂を作ることができ、且つ品質劣化することなく繰り返しリサイクルすることができる」
「原料となるPETボトルのフレークは、自治体や事業会社で回収したPETボトルを当社の協力工場で加工したものを使っている。ケミカルリサイクルの仕組みは、まずPETフレークをエチレングリコール溶液に投入して加熱して解重合し、PETを分子レベルまで分解する。この後不純物を取り除くために、脱色工程や金属イオンの除去工程、また晶析や分子蒸留などの工程を通してBHETの純度を高めて、BHETを再び重合して再生樹脂にする。不純物を完全に取り除いて石油に近い状態まで戻すことができるので繰り返しリサイクルすることが可能だ」
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